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PFAS処理に新手法

​2024年9月3日

  このたび、MSP株式会社(代表取締役、東京工業大学名誉教授 矢部孝)は、岐阜県各務原市のご協力のもと、PFOSおよびPFOAの低減化試験を実施し、1回の処理で80%の低減に成功いたしました。2回処理することにより、さらに低減が期待されるのはもちろんのこと、装置の一部を改良することで、飛躍的な低減効果が見込まれます。本装置は非常にシンプルであり、現在は日産1トンの処理能力を有しますが、スケールアップも可能で、各自治体が求める日産数万トンクラスの処理にも十分対応可能です。

  PFOSやPFOAなどの総称であるPFAS(有機フッ素化合物)は、防水加工やフライパンのコーティング、セロテープ、消火剤など、広範囲で使用されています。しかし、これらの化合物は分解が難しく、人体に蓄積されることで癌を引き起こすリスクがあるとされ、世界各国で厳しい規制が行われています。日本国内でもPFASに対する関心が高まりつつあり、各地で検査が進められる中、規制値を超える自治体が増加しています。例えば、大阪府摂津市では国の規制値の420倍にあたる21,000ng/Lが検出されています。

  さらに、半導体産業ではフォトレジストなどの材料としてPFASが使用されており、今後、各地で半導体製造工場の建設が進むにつれて、この問題は避けて通れない課題となるでしょう。

一般的な除去方法としては、活性炭に吸着させる方法がありますが、活性炭を廃棄する際にさらなる汚染の拡大を招く懸念があります。そのため、活性炭を高温(1,100度)で焼却し、PFOSやPFOAを分解する必要がありますが、これはSDGs(持続可能な開発目標)の理念に反するものです。また、家庭用浄水器でもPFOSやPFOAを除去する製品がありますが、膜を使用するため、廃棄された膜が新たな汚染源となるか、焼却が避けられない状況です。

  当社の装置は、もともと海水からマグネシウムを採取するために製造されたものであり、海水中の塩分を0.00%にまで低減する実績や、墨汁や汚水処理場の汚染水を純水化する実績を有しています。精製された水は純水の基準である電気伝導度1mS/mを達成しています。また、トリチウム水の分離にも成功しており、この成果は2023年に『Journal of Nuclear Science & Technology』に掲載されました。トリチウム水の分離は、従来不可能とされてきましたが、当社の独創的なアプローチは論文の査読者からも高く評価されました。

   従来の逆浸透膜(RO)装置では膜を使用して海水を濾過しますが、膜に塩が付着すると機能しなくなり、これを海に放出せざるを得ず、周辺の海水の塩分濃度を上昇させる問題がありました。一方、当社の装置は膜を使用せず、塩やマグネシウムを固体として回収するため、排出の必要がない全く新しい海水淡水化方式です。この技術は実際に装置化され、特許も取得済みです。

  この特長により、水中の物質を膜や活性炭を使わずに回収でき、今回のPFOS/PFOA低減実験に応用されました。この技術は、1万種類近いPFAS全てに適用可能です。薬品を用いる除去方法は対象物質が限定され、除去後の薬品自体も新たな問題となるため、あらゆる物質を除去できる我々の方法は非常に重要です。

本試験機の特徴

 

一切の薬品を使用せず、安全かつ環境負荷の少ない処理が可能です。 本装置は、海水から塩やマグネシウムを回収するために設計されており、処理過程で生じる全ての固形物を回収することができます。 膜や活性炭などの吸着材を使用しないため、交換部品が不要で、メンテナンスの手間やコストが大幅に削減されます。 最終的に、PFASをすべて固形状で回収し、再利用することが可能です。 動力源として電気のほか、太陽熱や廃棄物焼却熱など、さまざまな熱エネルギーを利用でき、持続可能な運用が可能です。 装置の規模を拡大することで、1日あたり2万トンの処理能力を持つシステムの構築も可能です。

​ニュースリリース全文

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